こんにちは。春日井市の元銀行員税理士・小野木です。
税金に関する届出書を提出したものの、取り返しがきかず、「やっぱり出さなきゃよかった・・・」と思ってそのままあきらめてしまうケースも多いかと思います。
ですが、届出書を出した後に状況が激変し、「こないだ出した届出書、やっぱりなしにしてくれませんか?」がOKなケースがあります。
もくじ
消費税の届出書を取り下げるケース
消費税の届出書にはいくつか種類がありますが、大枠でみると2つの種類があります。
①とある条件を満たしたことを報告するために提出するもの
②課税方法や課税事業者を自分で選択するために提出するもの
①は、
- 課税事業者届出書(基準期間における課税売上高が1,000万円をこえたら提出する)
- 納税義務者でなくなった旨の届出書(基準期間における課税売上高が1,000万円以下になったら提出する)
などがあります。
これらの届出書を提出したあとに、取り下げることもあるかもしれませんが、このケースは特に問題にはならないでしょう。
重要なのは②のほうで、主なものは、
- 課税事業者選択届出書(免税事業者が課税事業者になるための届出書)
- 課税事業者選択不適用届出書(課税事業者の選択をやめるための届出書)
- 簡易課税制度選択届出書(簡易課税制度を適用するための届出書)
- 簡易課税制度選択不適用届出書(簡易税制度をやめるための届出書)
などがあります。
わたしの顧問先で、
【いままで課税事業者を選択していたが、来期から免税事業者に戻るために「課税事業者選択不適用届出書」を提出したものの、来期に大規模な設備投資を考えているので、やっぱり課税事業者を選択したままでいたい】、というケースがありました。
こんなとき、「なんの手続きを」「いつまでに」やればいいのでしょうか?
「届出書の効力が生じる前」ならば、取り下げることが可能
届出書を誤って提出した場合や、提出した後に状況が変わって取り下げたい場合は、「届出書の効力が生じる前」であれば、取り下げることが可能です。
わたしが遭遇した上記の例でいうと、「課税事業者選択不適用届出書」の提出期限は「課税事業者の選択をやめようとする課税期間が始まる日の前日まで」ですので、効力が生じるのは「翌課税期間から」ということになります。
つまり、翌課税期間が始まる日の前日まで(当期の末日まで)であれば取り下げが可能、ということになります。
例えば、令和4年4月1日~令和5年3月31日に課税事業者の選択をやめたいので、令和3年10月15日に「課税事業者選択不適用届出書」を出した場合、この届出書の効力が生じる前の令和4年3月31日までであれば、取り下げが可能ということです。
届出の効力が生じた後は取り下げ不可
取り下げしたい場合でも、届出の効力が生じてしまった後は残念ながら取り下げることはできません。
例えば、令和4年4月1日~令和5年3月31日に課税事業者の選択をやめたいので、令和3年10月15日に「課税事業者選択不適用届出書」を出した場合、令和4年4月1日以降に取り下げたいと思っても、すでに効力が生じているので取り下げは不可となってしまいます。
取り下げの方法
取り下げの方法は、実はこれといったルールがありません。
任意の書式で「取り下げ書」を作り、税務署に書面で提出します(電子申告はできません)。
取り下げ書には、
・提出日
・宛名(○○税務署長)
・自分の名前・会社名(「氏名・法人名」「住所」「代表者名」「電話番号」など)
・タイトルは「取り下げ書」
・本文には、「令和○○年〇月〇日付で提出した○○○届出書を取り下げます」というような内容を記載
というような内容が含まれていればOKです。
取り下げ書といっしょに、当時提出した届出書のコピーを添付しておくとわかりやすいです。
また、取り下げた証拠を残すために、「原本」と「控え」の2通と返信用封筒を郵送し、収受印をもらっておくといいでしょう。
ちなみに、いきなり郵送してしまうと高確率で電話がかかってきますので、取り下げたい旨を事前に税務署へ電話しておくとスムーズです。
まとめ
届出書の取り下げ方法についてお話ししました。
忘れないように早めに出したことが裏目に出て、あとあと取り下げることは税理士なら1度は経験があるのではないでしょうか。
「取り下げるのを忘れてしまった!」とならないよう、しっかりと管理しておくことが重要です。